居場所の無さ

高校時代の友人で今は関東某所に住む友人が
実に20年ぶりに帰省した。

彼女は、数少ない私の友人の中でもかなりエキセントリック。
超・南国的にゆるく明るく、話していると笑いが絶えない。
他人の気持ちにとても敏感で、どこまでも優しく、
今でも私は折りにつけ彼女に励まされている。

そんな彼女には高校時代から変わらない部分がある。
本人も時々口にする「生まれついての居場所のなさ」
「居場所感の無さ、ならまだ良いんだけどね~」と言い
いつもひょうひょうとしている独特の雰囲気は何に由来しているのだろう・・・

「『外に昼餉をしたたむる わがよそよそしさと さびしさと』
これは室生犀星の「小景異情」の第一章のなかにある言葉だけど
それに近いものを感じるよ」

子どもの頃に母親を亡くし、父親と祖母に育てられた彼女。
アルコール依存症の父親に対する複雑な思いは時折彼女自身から聞いていた。
何かをキッカケに爆発的に激昂する父親へのこびりついた恐怖心と
それとは別のところの尊敬の念を併せ持つ自分がよくわからない、と。
彼女の父親はある競技のスペシャリストで
一時は同じ道を歩んでいた彼女には、尊敬すべき師でもあった。

幼い頃を沖縄本島よりさらに南の島で生まれ育ち
親族共々那覇に移り住み、ともに苦労を重ねてきた親族の中には
不幸な最期を遂げた人も少なからずいて、彼女に暗い影を落としてきた。

「幼いときから死が頭から離れずまとわりついて苦しむ私が、
けがと犯罪と事故とに翻弄された自分が、どうして、まだ死んでいないのだろう?」

帰省して久しぶりに会う親族と昔話で盛り上がり、
父や母のこと、初めて聞く話しもあったとか。
子供の時の記憶では喧嘩ばかりしてる両親だったけれど
若い時は相思相愛でいろいろな面白い話を聞けたことは救いになった。
子供目線では分からない親の姿・・・
自分もオトナになり、親になり理解できる部分もある・・・

彼女も今や子供5人の母となり(一番下の子は高校生)
「(自分達は)師弟関係のような夫婦」と言うように
父親と同じ競技者のご主人と仲良く暮らしている。
子ども会や地域に根ざした活動をしている、が
今も居場所の無さを抱えて生きている。闇はまだ深い。