手放す旅

いつものように夫の気まぐれで唐突な提案で敦賀へ行くことに。
「イヤ」で応えるのがお約束だけれど
今回は「行きましょう!」

琵琶湖の東側から北上して敦賀に到着。
ネットで予約していたお店で昼食を取り、お店の付近を散策。
全国的に暖冬ということで以前同じ時期に来たときと違い
吹く風は少し肌寒いものの街のなかには全く雪がなかった。

さて、私にとって今回の「旅」の目的は
あるブレスレット(ストーン)を「手放す」こと。

最初はとてもきれいな色だったのに
最近はくすんだ色に見えて
手放した方が良いのかもしれないと思うようになった。
地中に埋める、川に流す・・・どれもピンとこなくてどうしようかと
思っていたところに
敦賀」という地名を聞き、簡単に行けないくらい遠いところ、
そこで手放すことにしよう!

夫にはそのことを説明するのが面倒なので言わなかった。
舞鶴あたりまでドライブしようか、と夫が言ったので
「適当なところを見つけたらそこで手放そう」と思った。

舞鶴では成人式で盛り上がった一団のそばで
こっそり港の海に、とも思ったけど
深緑の海があまりに美しくなく、夫も含め、たくさんの人がいる中
海中に遺棄するところを目撃されるのもどうかと思い実行せず。

その後、三方五湖巡り、という遊覧船に乗ることになり
船の上から、そっと落としてしまおうと思ったが
甲板に出られる船ではなかったのでそれも出来ず・・・

今回、せっかく遠い所に来たのに
持ち帰ることになるのか、と諦めていると
思いがけず、夜の海辺を歩くことになった。

二度と来ることがないように、と地名は覚えないつもりだったのに
あまりにも、その光景が「良すぎて」覚えてしまった、
宮津の海・・・

夕方から夜に向かう時間
辺りは薄暗く、街や灯台の明かりが遠くに見えて
寄せては返す波の音だけの静かな海

車から降りて、海に向かって一目散に歩き出し
波打ち際から思いっきり沖合に向かってブレスレットを投げた

思ってたよりも遠くに飛ばなかったことが残念だったけれど・・・

灰色と黒の海の中に消えたブレスレット
夜のとばりが降りる暗い波間に投げ入れたにも関わらず、
何故か脳裏に浮かんできたのは
陽光きらめく水の中で輝くブレスレット
本来のきれいな色合いで、ブレスレットも喜んでいるように思えた

「本来の姿に戻る」・・・
私のそばにいて、私のネガティブなものを吸い取っていたのだろう。
私から離れ海の水で浄化されていくような、
そんなイメージが浮かんできて嬉しくなった。

もともと地球のかけら(石)をつないでできたブレスレット
長い時間をかけてばらばらになって
広い海の中で漂って流されていつか消えていくといいな・・・

砂浜に残った自分の足跡を踏まないように
逆方向の足跡をつけて戻った。