賠償金

犯罪の被害に遭った人を支援するボランティアをしている。
電話相談を主な活動として
吐き出したい辛い思いや、困っていることなどを聞いたり話し相手をしている。
話の内容によっては警察に繋げたり
連携している医療機関やカウンセラーを紹介したり
事件・事故のショックで一人で外に出るのが怖いという人のために
警察や裁判所、病院、買い物等の付き添いもしている。


ある女性は交通事故で働き盛りの夫を失った。
加害者は、40代で無職。前科があり、無免許で「盗難車」・・・
裁判に持ち込んでも賠償金は到底払えそうにない人間だった。

まだ小学生の子供を抱え、
これからどうやって生きていこうと悲嘆に暮れる中
知人や、見知らぬ人間から
「(加害者から賠償金を)いくらもらった?」と聞かれたり
お金の無心をされて困っていた。

宝くじに当たった途端、お金目当てにそれまで交流もなかった自称「親戚」や
「友人」が現れてくるという話は聞いたことがあるが
悲しみのどん底にいる人に興味本位で賠償額を聞き出そうとしたり
あわよくばそのお金を巻き上げようと企む卑しい人間がいることに驚いた。

そういえば
福島から「避難」してきた子が学校で他の子供(達)から
東電から賠償金をたくさんもらってるんだろう、と金銭を要求される
いじめ事件があったのも記憶に新しい。
子どもが起こした事件ではあるが、背景として彼らが
大人達が「賠償金の話」をしていたのを聞いていたのだろう。
多額の賠償金をもらってる(はず)などの憶測に基づいた話を。

つらい状況に置かれていると知っていながらも
そこに金があると思うと強烈な妬みになり
その金に群がってくる浅ましさ・・・

人が人の心を失うというのは
こういう時なのだろう。