『しゃおっ』

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「揚げたてのえびフライは、口の中に入れると、しゃおっ、というような音を立てた。」
 
昨日、誕生日だった娘のリクエストに応え、えびフライをつくりました(もちろん?冷凍の
 
娘が、一口食べて
「んん~!おかーさん、えびフライ食べるときって『しゃおっ』って音だよね~、確かに!」
「・・・?確かに、って何なん?」
 
国語の教科書に載っているお話『盆土産』 三浦哲朗)で、えびフライの事が出てくるんだけど
すごく美味しそうで、特に給食前に読むと、みんなおなかが鳴るんだよ(笑)・・・ということで
食べたくなったということでした。
 
そのお話のあらすじを聞いて、ちょっと胸が詰まりました。
今よりそう遠くない昔、家族が寄り添って暮らしている情景や、未知の食べ物への憧れ、父親の愛情、母親への思い、そんなものがふんわりと包まれたようなストーリーでした
 
娘には、小さい頃から普通にあったえびフライ、だけど
思い起こせば私の幼い頃には、えびフライなんてありませんでした。
最初にえびフライを食べた時、「なんて美味しいんだー!」と感動した記憶があります。
主人公がえびフライを食べたときの感動がすごくよくわかります・・・
揚げたてのフライを食べるとき「さくっと」という言い方はよくしますが、
「しゃおっ」は、ああ、そうそう、確かにそんな感じ・・・
 
しゃおっ、な食感と、美味しい記憶が結びついて
なんともほっこりした気持ちになりました
 
以下あらすじ・・・
東京に出稼ぎに出ていた父が盆土産に持って帰って来るという「えびフライ」。きっととびきりうまいものに違いない。その未知の食べ物の事で主人公の少年は頭がいっぱいで、朝から父のための川魚釣りをしていても落ち着かなかった。おまけに「えびフライ」と発音しようとしても、どうしても「えんびフライ」と訛ってしまう。

やがて父は帰って来た。土産の袋には湯気を噴き出す氷が入っておりドライアイスというものらしい。「えびフライ」は冷凍食品で生ものだったのだ。父は家族への土産のこの「えびフライ」を腐らせないために夜行列車で何度も起きてドライアイスで冷やしながら帰ってきたのだ。海で獲れたという見た事もない大きなえび。揚げたての「えびフライ」はえもいわれぬうまさだった。

次の日、たった1日半の滞在で東京へ戻るという父もまじえて主人公は家族総出で墓参り出かけた。思えば亡き母や祖父は「えびフライ」のようなうまいものを口にする事なく死んだのではないかと思うと、主人公は苦労の上に早世した母にさまざまな思いが湧いてくるのであった。

父との別れ際、泣きそうになった主人公は思わず、「さいなら」と言うつもりが「えんびフライ」と言ってしまった。父は「また買ってくる」と苦笑したが、それきりお互いに何も言えなくなって無言のまま父を乗せたバスは出発した。